気仙広域連合 復興への全体構想 <4>

東海新報に掲載されました気仙広域連合(岩手県大船渡市・陸前高田市気仙郡住田町の首長−戸田市長(大船渡市)、戸羽市長(陸前高田市)、多田町長(住田町)−による座談会の記事です。長い記事ではありますが、震災復興の全体構想・問題点が浮かび上がってきますので6回に分けて引用します。

第4回は「震災後の土地利用 復興を阻むもの」についてです。とくに住宅に適した土地を得るのを阻む農業振興法と埋蔵文化財が問題として挙げられています。


・・・以下引用・・・


 ―震災後の土地利用について、基本的な考えをうかがいたい。

 戸田 復興計画で示したように、当市の市街地の場合はJRの線路より山側に住み、海側については木造住宅を建てるのをやめようというのが基本的な考え方。あれだけの津波を経験したことから、実際にも木造以外の住宅を海側には建てにくいと思う。
 当市でも自宅を失った人は相当多いが、山側には住宅に適した土地というのは少ない。現在ある山側の平地を高度利用することになることから、一戸建てというよりも集合住宅に重きを置いたまちづくりになるのではないか。
 JRの線路より海側については、商店街のあり方を検討する必要があるほか、メモリアル公園をつくるとか、水産業関係の事業所、工場といったものを建てるとか、今、そのへんの計画を立てているところだ。
 戸羽 われわれの考え方というのは、被災したマイヤ前の停車場線と呼ばれている道路をひとつの幹線道路にする計画。そして、その手前の海側のところで段を付ける。停車場線より山手の方は商店街、あるいは人が住んでも大丈夫というぐらいかさ上げする。海側の低い所については農地であったり、太陽光発電であったり、企業誘致の用地に使いたい。

 ―震災復興のスピードにブレーキをかけているものに、さまざまな規制がある。被災自治体における規制緩和など盛り込んだ復興特区法が成立したが、具体的にどのような規制が障害になっているか。

 多田 私は農振法が大きな障害になっていると思う。農振の手続きをして農地から宅地にするのに普通で6カ月もかかる。大船渡や陸前高田の宅地開発については、すべて市長の判断でやっていいというぐらいにしないと。あと問題になるのは埋蔵文化財。この二つは少なくとも特区制度で規制緩和してもらわないと開発スピードが落ちる。
 戸田 私は高台移転について検討する中で、これまで2回、自衛隊のヘリコプターで上空から大船渡を見た。普段地上を移動しているだけでは、敷地の余裕があるとは分からないが、ヘリコプターから見ると有効利用できそうな土地がある。必ずしも森林を伐採してそこに土地を設けなくても、既存の集落に差し込んでやれば高台移転が実現できるんじゃないかと感じた。多田町長の指摘のとおり、農地の転用をしやすくすることは意義あることだ。
 戸羽 被災自治体が今、一番悩んでいるのが埋蔵文化財だ。それこそ住宅に適したようなところがたくさんある。本当に重要なものについては、当然、しっかりとした調査が必要だが、Aランク、Bランク、Cランクとあるものを全部同列にして「埋蔵文化財だからダメだ」という話になってしまうと大きな問題だ。

・・・次回に続きます・・・

東海新報(2012年1月1日付)より引用
http://www.tohkaishimpo.com/scripts/index_main.cgi?mode=kiji_zoom&cd=nws7263



・農業振興地域の整備に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S44/S44HO058.html

内閣官房地域活性化統合事務局「総合特区制度について」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/pdf/101224tokku_seido.pdf

文化庁埋蔵文化財とは」
http://www.bunka.go.jp/bunkazai/shoukai/maizou.html






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http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120105/1325719417

・気仙広域連合 復興への全体構想 <2>
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120103/1325546890

・気仙広域連合 復興への全体構想 <1>
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120102/1325521464