「国民の命を守る」こと 〜 東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会による「中間報告」より <1>

東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会による「中間報告」が2011年12月26日に公表されました。

東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会「中間報告」
http://icanps.go.jp/post-1.html

・「中間報告」概要
http://icanps.go.jp/111226HonbunGaitou.pdf


概要の方は16頁ですので、一読をお勧めします。ここでは、概要から最後の「9.小括」「10.おわりに」を引用します。ここで挙げられている点、「シビアアクシデント対策の欠如」「シビアアクシデント対策の欠如」「複合災害という視点の欠如」「全体像を見る視点の欠如」は、今回の原発事故の対応に限らず、日本という国のシステムそのものの問題として読むことも可能です。


・・・以下引用・・・

9.小括 【VII章9】
これまでの調査で明らかになった諸事実からすると、この事故の発生及びその後の対応について生じた問題の多くは、以下の三つが大きく影響していると考えられる。
1)津波によるシビアアクシデント対策の欠如
東京電力は、今回のような津波によりシビアアクシデントが発生することを想定した上で、それに対する措置を講じるということをしなかったし、規制関係機関も同様であった。今回の津波のように、確率的にその発生頻度が低いと評価された事象であっても、発生した場合には被害規模が極めて大きくなると予想されるものについては、リスク認識を新たにし、それを無視することなく、必要な対策を講じておくことが必要である。
2) 複合災害という視点の欠如
原発事故が複合災害という形で発生することを想定していなかったことは、原子力発電所それ自体の安全とそれを取り巻く社会の安全の両面において、大きな問題であった。複合災害を想定した対応策の策定は、今後の原子力発電所の安全を見直す上で重要なポイントとなる。
3)全体像を見る視点の欠如
これまでの原子力災害対策において、全体像を俯瞰する視点が希薄であったことは否めない。そこには、「想定外」の津波が襲ってきたという特異な事態だったのだから、対処しきれなかったという弁明では済まない、原子力災害対策上の大きな問題があった。
以上から指摘できるのは、一旦事故が起きたなら、重大な被害を生じるおそれのある巨大システムの災害対策に関する基本的な考え方の枠組み(パラダイム)の転換が、求められているということである。

10.おわりに 【VII章10】
何かを計画、立案、実行するとき、想定なしにこれらを行うことはできない。しかし、同時に、想定以外のことがあり得ることを認識すべきである。
今回の事故は、我々に対して、「想定外」の事柄にどのように対応すべきかについて重要な教訓を示している。
当委員会は、現在も、長期間にわたる避難生活を強いられ、放射能汚染による被害に苦しみ、あるいは、被ばくによる健康への不安、空気・土壌・水の汚染への不安、食の安全への不安を抱いている多くの人々がいることを銘記しながら、更に調査・検証を続けていく。

・・・引用終わり・・・



ここに挙げられている、「どのように『想定外』の事柄に対応すべきか」、「なぜ電力会社や規制関係機関がシビアアクシデントが発生することを想定し、それに対する措置を講じるべきなのか」という問題は、同時にいったいそれは「誰のため」の対応であり措置であるべきなのか、ということも考えさせられます。

(次回に続きます)




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