気仙広域連合 復興への全体構想 <2>

東海新報に掲載されました気仙広域連合(岩手県大船渡市・陸前高田市気仙郡住田町の首長−戸田市長(大船渡市)、戸羽市長(陸前高田市)、多田町長(住田町)−による座談会の記事です。長い記事ではありますが、震災復興の全体構想・問題点が浮かび上がってきますので6回に分けて引用します。

第2回は「国の対応・スピード」についてです。何より優先されるべきは一刻も早い復興支援へ向けての国の迅速な決定であるはずなのに、政局がらみで対応が遅れたことへの各首長のいらだちと失望がつたわってきます。
戸田市長が挙げている6月から8月の政局は、まさに茶番劇の様相を呈した内閣不信任案否決(6月2日)から菅直人首相退陣(8月26日)にいたる時期です。さらに7月5日には松本龍内閣府特命担当大臣引責辞任、7月7日には海江田万里経済産業大臣原子力損害賠償支援機構法案の成立をめどに辞任する意向を表明するなど、与党民主党内でもごたごたが続きました。「東日本大震災復興基本法案」の公布・施行は6月24日まで遅れ、この法案によって基本方針が定められた復興庁は、ようやく12月9日に「復興庁設置法」が国会で成立、実際の設置は年明けの本年2月になるとのことです。
いっぽうで多田町長の「気仙という歴史も文化も生活も一緒にしている人たちの痛い思いが伝わってきたからやったまでのこと。その人たちに一日も早く避難所から抜け出してほしいと思うのは当然の話だ」という言葉が印象的です。


・・・以下引用・・・

 ―復興に向けて何をするにしても、そこには国の対応が必要になってくる。震災復興への国の対応についてはこれまでスピードが遅いといわれてきたが、被災自治体としてどう感じているか。

 戸田 3月、4月ごろはスピードがあるかなと感じていたが、6、7、8月と政局がらみで足踏み状態になった。国会議員や政府の中枢の方々がお見えになった際、私は大船渡のその時その時の置かれている状況や速やかに対処しなければならない課題をアピールする資料を配ったが、その最後にこう書いた。「小異を捨てて大同についてほしい」と。今は政局をやっている場合じゃない、被災地の復興に向けて一致団結してほしいと訴えかけてきたが、政局含みの動きというのは完全には収まらなかった。
 戸羽 第2次補正までは復旧の部分。第3次補正ではじめて復興の部分が入ってきて、やっとスタートに立てたなという思いがあるので、不平不満を言う気はない。ただ、戸田市長と同じように、なんで政局が起こるんだという残念な思いはある。
 そもそも、今までに例のないぐらい大きな被害を国民が受けているときに、総理大臣が替わるなどということは、よその国ではぜったいにあり得ないこと。松本復興担当大臣も辞任したが、あの人ぐらい被災地に寄り添って一生懸命仕事をやっておられた人はいない。松本さんは被災地のことをいろいろ分かっていたし、われわれとも連携が取れていた。まさに国とのパイプ役だったが、断片的なところだけをとらえられ、責任を問われた。
 新しい大臣が(地元の)平野さんになったから岩手はいい。でも福島、宮城ではまた「初めまして」から始めなければならない。そういうことを分かってもらえない政治家の方々と被災地の気持ちのギャップをこの間、常に感じてきた。
 多田 私は仮設住宅の関係でいろんな報道関係の人たちから問い合わせや取材を受けた中で「なんで住田町はそんなに早くできたんですか」と聞かれたが、それは気仙という歴史も文化も生活も一緒にしている人たちの痛い思いが伝わってきたからやったまでのこと。その人たちに一日も早く避難所から抜け出してほしいと思うのは当然の話だ。
 国の役人さんたちは、ここに来たときは「大変だな」と思う。けれども、東京に戻ればかなりの部分が永田町論理になり、現場とかけ離れてしまうのではないか。

 ―仮設住宅の建設を町の単独判断で進めた理由は。

 多田 国や県に相談していては、スピード感を持ってやれないと思った。それで議会の皆さんに集まってもらい、「自分の判断でやらないとスピード感が出ない。とにかく被災地のためにやらせてくれ。あとで議会の承認はお願いする」と話したら、議員の方々は「こういう時だから町長の判断にまかせる。ただし、住田はけちったとか、住田は手抜きをしたとか言われないようにしっかりやれ」と理解を示してくれた。今回の仮設住宅建設では、議会と一緒になってやれたというのが大きかったと思う。

・・・次回に続きます・・・

東海新報(2012年1月1日付)より引用
http://www.tohkaishimpo.com/scripts/index_main.cgi?mode=kiji_zoom&cd=nws7263



内閣官房復興庁設置準備室「復興庁設置法の概要」
http://www.reconstruction.go.jp/topics/fukkouchousecchi_gaiyou.pdf





【サイト内関連記事】
・気仙広域連合 復興への全体構想 <1>
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・「までいの心」がつなぐもの 〜 福島県相馬郡飯舘村 <2>
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・「までいの心」を 〜 福島県相馬郡飯舘村 <1>
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110602

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