自力だけではどうにもならない人生だからこそ

・・・遭いたくはないが、避けられないのが自然災害だろう。東日本大震災があったばかりなのに、今度は台風12号が各地に大被害をもたらした。自然と向き合うということは、簡単なようで実は容易でない行為だ▼現実に三陸沿岸部に住む80代は、物心ついてから3度の津波を体験している。戦争という「人災」を含めると4度の大災禍を目の当たりにした勘定だから、“人間する”のは決して楽ではないのが事実。しかも楽しかるべき余生に待ったがかかれば、無常感はなおさらだろう▼生きるとは、楽しいこともあるが、逆にどんな不幸と際会するかもわからないという暗黙の契約を天と交わして成り立っていると解釈してもおかしくはない。だからこそ少なからぬ人々が「自分は生かされている」という認識を抱いているのである。自分の意思で生きているのではないと思えば、いやでも無常感と付き合わねばならない▼
以上、悟りきったような言い方だが、美空ひばりの歌う「川の流れのように」を聴いてジーンとくるのは、彼女のそうしあわせではなかった人生と歌とがダブるせいもあるが、「それもまた人生」という部分が生きることの意味を教えてくれるような気がするからだろうか▼被災した年配者たちは「この歳になってなんでこんな目に遭わなければならないのか」と反問しつつも、しかしこれもまたオレの人生かと思っているのではなかろうか。自分の力だけではどうにもならない人生だからこそ「仕方がない残りにかけるか」と達観できるのだろう・・・

東海新報『世迷言』(2011年9月7日付)より引用
http://www.tohkaishimpo.com/scripts/column.cgi






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