特別なお盆 〜 「我と来て遊べや親のない雀」

・・・お盆だ。帰省ラッシュは今日、ピークを迎える。例年のことながら、ふるさとへの道のりは混雑すること必定だ。それでも帰るところがある人は幸いだ▼さまざまな帰省があるだろう。友人も東京から始発の新幹線に乗り、きょうやってくる。老母が3月に亡くなったので、新盆だ。ふるさとには墓所だけが残っている。母親のお骨を抱えての帰省は、納骨のためである▼彼の母親のことは若いころから知っている。働き者だった。女手一つで二人の息子を大学まで進学させた。愚痴ひとつ聞いたことがない。年老いて都会の息子たちに引き取られたが、よく電話をくれた。「ふるさとが恋しい」と
▼帰りたいのに帰れない人もいる。今年の場合、福島第一原発の事故で避難生活を余儀なくされた人びとだ。放射能のせいで、お盆なのに墓参りもできない。しかもこの先、ふるさとを不在にする日々がいつまで続くのかわからない。その所在なさの不安、精神的苦痛は察するに余りある▼湯人の老母の場合、亡くなったのは震災の直前だった。弔電を送っただけで、葬儀には行けなかった。電話で友人に詫びると、「盆には納骨に行くから、そのとき付き合ってくれ」と言われた。「ふるさとが恋しい」と言っていたのだから、心して迎えたいと思う▼あれから5カ月。今年のお盆は特別だ。大震災で親を亡くした子どもは、2千人以上。このうち両親ともに失って孤児になってしまった子は200人余り。その子らの行く末を案じる親心にとっても新盆である。「我と来て遊べや親のない雀」(一茶)。

北羽新報『渟城雑記』(2011年8月12日付)より引用
http://www.hokuu.co.jp/higasinihonndaisinsai/zakki8gatu.html


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・・・東日本大震災で被災した福島県の小学生39人が10〜12日の3日間、八戸青年会議所の招きで南部町などを訪れ、楽しい夏休みのひとときを過ごした。
招待は同会議所が「青い森リフレッシュキャンプ」と銘打ち震災、原発事故などで苦しむ福島の子供たちに外で思いきり遊んでもらい、心のストレスを軽減してほしい、と企画した。
11日は子供たちが南部町のバーデハウスでプール遊びなどを行った。原発事故の影響で外で遊べないため、プール遊びは今年初めてという子供たちが多く、大型すべり台などで水しぶきを上げ、歓声を響かせていた。(中略)
福島県の伊達小学校3年の大槻朱奈さんは「学校のプールは使えないので、泳げて楽しい」と笑顔を見せていた・・・

東奥日報(2011年8月17日付)より引用
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2011/20110817103618.asp



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・1年3か月ぶり − 帰港
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110630/1309392714