避難生活長期化への対策

・・・気仙両市では、保健師らが被災者から聞き取った病状や健康状態をデータベース化する取り組みを進めている。両市とも震災以降、他自治体から派遣を受けた保健師らの力を借りながら避難所や各住宅を回り、地域住民と向き合ってきた。震災から100日余りが経過し、今後は健康保持への対応が求められる中、情報共有を進めることで高齢者らのケア充実や孤独死防止を図ることにしている。
大船渡市盛町の市保健介護センターでは今月から、銀河連邦共和国加盟が縁で支援に入る秋田県能代市の職員が中心となり、保健師が調査した情報の入力作業を続けている。3月以降、調査数は延べ2万8000人を超え、作業スペースには膨大な紙が綴られたファイルが重なる。
能代市職員が作成した調査票フォームに、氏名や年齢といった基礎情報に加え、病状や体の不具合、住宅状況、日中・夜間それぞれの滞在場所などを打ち込む。食事や口腔ケア、心のケアなどの問題で保健師が気になった事項も添える。
陸前高田市でも保健師らから得た情報を、岩手医大によってデータベース化する取り組みが進む。4月上旬以降、応援に駆けつけた保健師チームが、避難所巡回や家庭訪問を行って聞き取りを重ねた。県大船渡保健所職員として、昨年まで3年間同市に派遣された佐々木亮平さん=日本赤十字秋田看護大学助教=らも支援を続けている。
震災から3カ月半が経過し、避難所で過ごす被災者数は、ピーク時と比較して1割程度にまで減った。一方で、仮設住宅をはじめ個人のプライバシーが守られた空間で生活できる住民が増えることで、周囲からは体調などの変化に気づきにくい側面も生まれつつある。<中略>
避難施設では食事が支給されてきたが、仮設住宅では生活費や買い物に行く手段確保も求められる。自炊によって、栄養バランスを崩すことも懸念されている。
仮設住宅の入居期間は2年以上が見込まれる中、行政側による継続的な支援が不可欠。両市とも保健師体制には限界があるため、他自治体からの応援だけでなく、効率的な運営が求められている。データがあれば、その場の健康状態だけでなく、震災当日の被災状況や避難所暮らしなどを振り返った上でのアドバイスにもつながる。
能代市職員の大塚紀美男さんは「データにすることで行政や医療機関が持っている各種情報とも連動させられる。保健師が現場で得た“声”が行政組織に吸い上げられやすくなる」と、メリットを語る。<以下略>

東海新報(2011年6月25日付)より引用
http://www.tohkaishimpo.com/scripts/index_main.cgi?mode=kiji_zoom&cd=nws6724


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・・・震災後の不自由な生活が引き起こす「生活不活発病」を予防しようと、陸前高田市は25日、広田町の大久保仮設住宅団地(広田小学校グラウンド)の入居者を対象に「いきいきクラブ活動」を開催した。各方面からの協力のもとお年寄りたちが野菜の苗植えを行い、久々の農作業に笑顔を広げた。
生活不活発病は、避難生活の長期化など動くに動けない状態が続くことにより、心身の機能が低下していくもの。平成7年の阪神・淡路大震災、同16年の新潟県中越地震などの際、高齢者が陥り介護が必要となるケースが多かったとされ、東日本大震災でもこの予防の重要性が増している。
同日の活動は、予防の一助にと市健康推進課が主催し、地域支援として震災後同町に入っている横浜市支援チームが協力。
大久保団地は63世帯中およそ40世帯にお年寄りがおり、震災以前に多くの人が日常的に親しんできた野菜づくりを楽しんでもらうこととした。<中略>
この日植えた苗は、参加者それぞれが管理。日ごろの世話のための体を動かすきっかけづくりにとどまらず、収穫期のおすそ分けなどによる入居者同士の交流活発化にも期待が持てそうだ。

東海新報(2011年6月26日付)より引用
http://www.tohkaishimpo.com/scripts/index_main.cgi?mode=kiji_zoom&cd=nws6726