「なにくそ」 

被災された方々ばかりでなく、いまをともに生きるすべての方の心に響くのではないか、そんな言葉がありましたのでご紹介いたします。


・・・あまりにむごい惨状を目のあたりにし言葉を失う毎日だが、しかし悪夢のようなこの惨状に立ち向かわずして犠牲となった方々に何の顔(かんばせ)があるだろうか。ここは歯を食いしばって立ち上がり、一日も早い復興を目指すと同時に、安全で安心で快適な新しい町づくりに英知と努力を結集する時である
▼敗戦後焦土と化した故国で、人々が悲嘆にくれる間もなく、強い意志を取り戻して復興の一歩を踏み出したことを想起したい。悲しみを決然とした勇気に切り換えるものは、故郷を元の姿に取り戻したいという一心だったはず。そこに心の絆が生まれ、地域の連帯が深まったことが復興につながったのだ
▼沿岸部を奈落の底に突き落とした壊滅的被害からの復興は、国家の全面的に支援なしにあり得ないのはもちろんだが、その前に被災地域の個々が「なにくそ」という不屈の精神を発揮することが肝心だろう。でなければ天の意地悪な試練に屈したことになるからだ
▼多くの人々が、家族、親族、友人、知人その他、もう二度と会えない顔を思い浮かべて運命の非常を恨んでいるだろうが、だからこそ犠牲者の鎮魂のためには、残されたわれわれが気をとり戻し、与えられた生を最大限にいかすことであろう。失われたものはあまりに大きいが、災い転じて福となす覚悟があれば、光はかならずさしてくる。

東海新報「世迷言」(2011年4月1日)より引用
http://www.tanko.co.jp/110401-1.zip
*ここに生に満ち溢れる写真が掲載されています。どうぞご覧ください。