「防災の日」<1>  〜 課題を浮かび上がらせる訓練を

 フィリピン沖の地震津波注意報が出され、全国各地の警察や消防が沿岸部の警戒に当たったばかりの9月1日、全国で防災訓練が行われました。都内でも首都直下型地震を想定した防災訓練、西日本各地でも南海トラフの巨大地震を想定した大規模な防災訓練が行われています。
 避難だけでなく避難所を運営するための訓練が行われたという記事、それから「課題を浮かび上がらせる訓練」を説く「被災地から手本を示す」と題された論説もありましたのでご紹介します。後者には「さまざまな訓練や演習で指摘される問題点は防災・減災対策の練り直しにつながる。(福島)県は地域防災計画の見直しに当たって、県民の意見を広く聞くパブリックコメントを近く受け付ける」とありますので、浮かび上がった課題を住民の側からフィードバックすることも可能になります。

 なおフィリピン沖の地震に関連して、遠地津波(その地点で地震波動を感じないような遠方の地震による津波)については、以下の記事もご参照ください。気象庁の関連ページも再掲します。

・過去の災害に学ぶ<6> チリ地震(1960)と遠地津波への対処
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120524


・最新の遠地地震についての情報は以下の気象庁のページからご覧になれます。
http://www.jma.go.jp/jp/quake/quake_foreign_index.html

気象庁南鳥島気象観測所のページ
http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/minamitorishima/

気象庁・Northwest Pacific Tsunami Advisory
http://www.jma.go.jp/en/distant_tsunami/WEPA40/indexo.html




・・・「防災の日」の1日、東日本大震災後初の県総合防災訓練(県、釜石市共催)が、釜石市で実施された。昨年3月11日の震災の教訓から、二度と多くの人命が犠牲にならないよう、住民や防災関係機関が連携し、高台への避難方法や避難所の運営の仕方、各機関同士の連携など実践的な51項目の訓練を実施。有事の対応を確認した。

 震災の教訓を踏まえ、関係機関が住民に披露するだけでなく、全市民を対象とした参加型で、より実践的な訓練を計画。三陸沖を震源東日本大震災と同程度の地震が発生し、本県に大津波警報が発令されたとの想定で実施した。高台への避難訓練では、防災行政無線での呼び掛け方について、緊迫した状況を伝えるために「避難を指示します」から「避難せよ」と、時間の経過とともに命令口調に変えて対応した。

 避難所を運営するための訓練も初めて行われた。同市中妻町の釜石中で、住民が避難者名簿の作成のほか、生活スペース確保のための間仕切りの設置、支援物資の受け入れ、炊き出し準備などを展開し、手順を確認した・・・(以下略)

岩手日報(2012年9月2日付)より引用
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20120902_3


・・・宮城県沖を震源地とする地震が8月30日未明に発生した。仙台市震度5強福島市富岡町で震度3を記録した。東日本大震災の余震とみられる。「3・11」は継続していると受け止めなければならない。
 県は9月1日の「防災の日」に合わせ、大規模な総合防災訓練を毎年繰り返してきた。かつて2年に1度だった原子力防災訓練は平成12年から年1回とした。今年度は大震災への対応を優先し、見送られている。
 県は11月を目標に県地域防災計画を見直す作業に当たっている。当面は、初動対応の在り方を重点的に改め、来年度以降も他の分野の修正を検討する。見直しがある程度進んだ段階で、本格的な訓練を復活させ、実践的な計画づくりに生かすべきだ。
 地域、学校、職場などの身近な活動を新しい地域防災計画に反映させることも大切だ。大震災と原発事故を受けた取り組みが「防災の日」の前後に県内各地で行われている。県と災害時応援協定を結んでいる企業・団体は31日、県との間で連絡の取り方などを確認した。1日は、いわき市沿岸部の住民が津波避難訓練に臨む。国、県、市町村は地震や大雨を想定した情報伝達の演習なども繰り広げている。
 さまざまな訓練や演習で指摘される問題点は防災・減災対策の練り直しにつながる。県は地域防災計画の見直しに当たって、県民の意見を広く聞くパブリックコメントを近く受け付ける。県民や企業・団体は、県や市町村の防災対策への意見を積極的に出してほしい。
 訓練内容の再考も欠かせない。これまでは、行政などの主催者側が用意した台本通りの進行や、参加者に見せるだけの「展示型」の傾向があった。訓練は課題を浮かび上がらせることに大きな狙いがある。台本や事前通告をなくした場面を取り入れれば、有事の対応に役立つ。
 市町村も地域防災計画の点検や修正に取り掛かっている。大震災と原発事故は、県や市町村の垣根を越えた住民避難、情報・物資のやり取りなどの対応を迫った。県と市町村の計画、あるいは県外の自治体の計画と、どのように関連させるのかも重要だ。
 年に一度の「防災の日」に加え、県民と行政が一体で災害への備えを確かめ合う機会を本県独自に設けるべきだ。震災の記憶を後世に語り継ぐことにも結び付く。大震災の教訓を生かし、全国の手本となる取り組みを被災地から発信したい・・・

福島民報(2012年9月1日付論説)より引用
http://www.minpo.jp/news/detail/201209013419



【サイト内関連記事】
地震津波時、消防団活動にマニュアル 大船渡市
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120830

・震災復興における街づくり 〜バリアフリーとシミュレーション
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120814

原子力防災訓練のあり方 <1>〜<2>
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120709

・過去の災害に学ぶ <1>〜<6> 
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120524

・「次は何を持ってどこに逃げれば良いか考えていた」 〜 日常的な避難意識の大切さ
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120315