震災を将来に生かすための復興教育・震災学習<1> 〜 岩手県で本格化

 岩手県は、平成23年度復興教育支援事業採択団体となっており、事業概要として「保護者や地域住民などの多様な主体による教育支援を受けながら、『岩手の復興教育』を推進するため、いわての復興教育プログラムの作成を行うとともに、小中学校を対象とした復興教育支援モデル事業や県立学校を対象とした豊かな心や確かな学力の育成事業を推進する」ことを掲げています。

文部科学省平成23年度「復興教育支援事業」採択団体の決定について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/24/01/__icsFiles/afieldfile/2012/01/31/1315408_01_1.pdf


 春の季語に蘖(ひこばえ)という言葉があり、木の切り株から新たに出た芽のことです。また蘖ゆ(ひこばゆ)といえば、新たな芽が出ることを指します。さらに分蘖(ぶんけつ)といえば農業用語で「稲・麦などが根元から枝分かれして増えること(新漢語林)」だそうです。
 岩手県の取り組みは、この新しい芽である子供の将来、また日本全体の将来に貢献する取り組みだといえるでしょう。


 「荒小田の去年(こぞ)の古跡の古よもぎ今は春べとひこばえにけり」(曾禰好忠新古今和歌集春上)



<参照>「いわての復興教育」 〜 指針となるプログラム作成
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20111227



【関連記事1】
・・・震災を風化させず、教訓を将来に生かすことを目的とした復興教育や震災学習が、本県の教育現場で本格化している。県教委は本年度から「いわての復興教育学校支援事業」を開始。モデル校の一つの大船渡市の末崎(まっさき)中(吉田昌陽(まさはる)校長、生徒133人)は25日、地域住民とワカメの芯抜き実習に取り組んだ。モデル校は県内全市町村に配置され、今後の多彩な活動が注目される。

 同日実習を行ったのは2年生50人。地元の漁業者約10人が指導した。自ら育て3月に収穫したワカメの芯を抜き取り、箱詰めに汗を流した。

 復興教育は▽防災教育▽ボランティア教育▽心のケア▽地域との交流−など。県教委は全県立学校に加え、小学校26校、中学校20校をモデル校に選んだ。内陸を含む県内全市町村に小学校か中学校のモデル校が置かれ、県教委は1校につき20万円を補助し、取り組みを後押しする。

 モデル校は▽低学年は体育の授業で判断力やコミュニケーション力を培いながら素早く避難行動ができるようにする(宮古小)▽地域に伝わる郷土芸能「虎舞」を被災者に披露(吉里吉里中)▽沿岸で復興に携わる人の思いをインタビュー(徳田小)−などを実施・計画。モデル校以外でも独自の復興教育が展開されている・・・

岩手日報(2012年5月26日付)より引用
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20120526_7


【関連記事2】
・・・「頑張れ、頑張れ気仙沼」−。一関市室根町の室根西小学校(細川雅彦校長、児童102人)で26日開かれた運動会で、同町の仮設住宅で暮らす宮城県気仙沼市の被災者たちを元気づけようと、全校児童がエールを送った。

 同校は、2012年度から本格的に実施される「いわての復興教育」で、県教委からモデル校の指定を受けた。学校側は、東日本大震災の経験を通し▽教訓を生かす▽たくましく生き抜く力、助け合う力を育てる▽震災を語り継ぎ風化させない−を目標に掲げ、明るい未来を創造するたくましい児童の育成に向け、今年度、被災者から震災の体験を聴いたり防災を学ぶ計画だ。

 11日には、同市室根町にある旧折壁小仮設住宅の前自治会長尾形英雄さんを招いた講演会を同校で開いた。尾形さんは3〜6年の児童を前に、気仙沼市での津波体験を語りながら「仲間意識を大切にすれば絶対助かる」と呼び掛けた。

 運動会の午前のプログラム終了後、招待した尾形さんに対し、全校児童が「フレー、フレー気仙沼」「頑張れ、頑張れ気仙沼」と太鼓の音に合わせ大きな声でエールを送った。

 児童を代表し及川日菜子さん(6年)と小野寺結衣さん(同)が「地震津波のことを教えていただきありがとうございました。仮設住宅で声を掛け合っていた話がとても印象に残りました」「私たちは、気仙沼の皆さんや津波で被害を受けた皆さんが、地震の前よりも幸せだなと感じられる生活が送れるように応援しています」と、それぞれ感謝と励ましの言葉を述べた。会場の保護者らからは大きな拍手が送られた。

 尾形さんは「ありがたいエール、本当にありがとうございます。気仙沼のますますの復興、私も期待しています。皆さんとこれ以上に友情を深めていきたい。室根の発展、気仙沼の復興を大事にしていきたいと思います」とお礼を述べていた。

 同校は、昨年5月の運動会でも避難している被災者15人を招待し、競技を通して応援した。

 今年5月9日には3〜6年生が気仙沼市に行き、被災状況と復興に取り組んでいる様子を見学。学年ごとの学習で、今後さらに復興などについて学んでいく。

岩手日日新聞(2012年5月27日付)より引用
http://www.iwanichi.co.jp/ichinoseki/item_29646.html


岩手県一関市室根町】
一関市室根町のある第12区自治会は、岩手県の南端で、宮城県とも接しています。
その「『ひこばえの森』と『水車村』を拠点に環境保全活動と交流が広がるむらづくり」は、昨年を農林水産大臣賞を受賞しています

農林水産省の資料によれば、室根西小学校児童の保護者で構成する組織によって、「親子レクリエーションや地域の郷土芸能である打ち囃子・七福神舞の指導」、「『森は海の恋人植樹祭』の開催準備や植樹に参加する子どもたちの支援や地区会館の清掃活動」を行っているとのことです。


農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/binosato/b_maturi/pdf/h21_n_daizin2.pdf




【サイト内関連記事】
・「交流を機に、子どもたちの視野が広がり、お互いのまちにないものを知ってほしい」 陸前高田市名古屋市
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120501

・過去の災害に学ぶ<5> 明治三陸地震(1896)と「遠野物語」 〜 山田町船越
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120425

・「希望の一本松」 〜 枯死するも接ぎ木や実生からは新たな苗、後継樹の育成へ
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・未来の地図を <1>〜<3>
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・亡き人の手習ひ、繪かきすさびたる見出でたるこそ、たゞその折の心地すれ
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・親を失った子どもたちの「心のケア」と支援 <1>−<2>
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110914

・「もしものときにも負けない子どもに」 〜 子どもを対象にした防災キャンプ
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110907

・特別なお盆 〜 「我と来て遊べや親のない雀」
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110820

・こころのサポートプログラム
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110521/1305941367